p16遺伝子は癌抑制遺伝子の一つであり、Chromosome segment 9p21上にあると推察されている。本研究では、癌抑制遺伝子p16と実際の臨床とを関連付ける事を目的とした。組織型によっても転移する頻度は異なるが、p16遺伝子と転移との関係およびapoptosisと関連した腫瘍の悪性度が明らかになり、患者の予後を推測する因子として確立されれば、現在臨床の場で用いられているTNMによる病期分類に代わり患者の治療方針を決定する重要なファクターになると考えられる。5生率を確認するため1995年以前に、当科において非小細胞肺癌(NSCLC)のため肺切除を受けた患者の凍結切除標本およびブロック標本を用いて、p16遺伝子のNSCLCにおける欠落発現と腫瘍の悪性度の関連を検討した。 1. p16遺伝子のm-RNAの発現の有無を検討したが、凍結切片の保存状態が安定していなかったため、実際にp16遺伝子の欠損なのか、保存状態が良くないために生じた欠損なのか判定に苦慮した。 2. これにより平成11年度予定のSouthern blottingを行いp16遺伝子の欠損や変異についてDNAレベルで確認する研究に対しても得られた結果が、本当の欠損なのか癌腫検体のDNAダメージによるものなのかの判定が困難となるのではないかと危惧された。 3. 確かな結果を導き出すために、各々の検体に対して予定していたSouthern blottingではなくFISHを行いて、DNAのDouble Strandを蛍光染色する方法を採る事とした。 4. 9番セントロメアの同時FISHを行い、Loss Of Heterozygosity(LOH)およびHomozygous deletionを調べることにより、p16遺伝子の欠損や変異についてDNAレベルで確実に確認する。
|