研究概要 |
変異単純ヘルペスウイルスは現在脳神経系腫瘍のみならず非脳神経系固形腫瘍に対する新しい遺伝子治療として広く研究がすすめられている。本研究ははこの変異ウイルスを肺悪性腫瘍に用い、抗腫瘍効果を検討することを目的とする。本年度は主にIn vitroにおける抗腫瘍効果を測定した。 1. 細胞培養: 肺悪性腫瘍の5つの主要な病理組織系に対しそれぞれ2-3の細胞系を選択し細胞培養を行った。扁平上皮癌 (Calu-1,SK-MES-1,SW-900)腺癌 (Calu-3,SK-LU-1)気管支上皮癌 (NCI-H322,NCI-H-358)大細胞癌 (NCI-H460,NCI-H661)未分化癌 (Calu-6,ChaGo-K-1,A549)2. 変異ヘルペスウイルスの抗腫瘍効果の判定(In vitro): 96穴プレートを用いて上記12の肺悪性腫瘍細胞系にたいし変異ヘルペスウイルス(HSV-1716,R3616,G207)の効果を測定した。MOI 0.01.0.1,0.3,1.0,10にて感染を行い,3-7日後にMTS Assayをもちいて効果を判定した。MOI 1.0にて上記12の細胞系のうち10の細胞系で75%以上の殺細胞効果が得られ、肺悪性腫瘍細胞は変異ヘルペスウイルスに対して感受性があることが示唆された。今回使用した変異ウイルスのなかではHSV-1716がもっとも有効であった。 3. Ganciclovir(GCV)に対する感受性試験: ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子の導入より癌細胞のGCVに対する感受性が冗進することが知られている。変異ヘルペスウイルス感染細胞におけるGCVの効果を測定するために、上記In vitroの実験系ににてGCV投与(20μg/ml,3日間)投与を行ないウイルスのみの効果と比較した。すべての細胞系にてGCVはウイルス由来の抗腫瘍効果を増強することができなかった。 4. 動物実験:SCIDマウスにてA549およびNCI-H460細胞を用いた皮下腫瘍モデルを作成した。今後、このモデルを用いてHSV-1716のIn vivoにおける効果を検討する予定である。
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