臓器移植において、レシピエントにおける特異的免疫不応答状態(免疫学的寛容)を生じさせる一手段として、ドナーの血液を少量レシピエントに注入し、しかる後に臓器移植を行い免疫学的寛容を得る手法、即ちDST(donor specific transfusion)がある。本研究はこのDSTの機序を胸腺におけるClomal deletionによるものと仮定し、しかもこれが胸腺アポトーシスによるものであることをラット肺移植モデルを用いて証明することを目的とした。 DSTの効果は肺移植においては報告がなく、まず肺移植においてこれが再現され得るか否かを検討した。過去1年の研究でBN種ラット→F344種ラット間の移植では、無処置移植群の移植肺が全例6日以内に拒絶され脱落したのに対し、DST処置群では50%の動物で7日以上の生存延長が確認され、DSTが肺移植においても有効であることが確認された。しかし胸腺・脾臓のアポトーシス発生の状態を検討する為Tunnel法を用いて免疫組織学的に評価を行ったが、DST群・非DST群間に差は認めなかった。逆にDSTによって胸腺・脾臓の重量は著明に増加しており、胸腺・脾臓においてむしろClonal deletionとは逆の現象が発生している可能性が示唆された。おそらくTh2 clone増殖に伴うSuppression mechanismによるものではないかと推測している。本研究の後半一年は、DSTのメカニズムにおけるSuppressor T cellの役割をラットにおけるCD45RCマーカーの検索(Flowcytometricanalysis)により検討するとともに、Apotosis/Clonal deletionの観点からも更に検討する計画としている。
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