研究概要 |
新生マウス(0日齢)および幼若マウス(7,14,28日齢)をパラフォルムアルデヒドにて経心臓的に潅流固定を行った後,脊髄後根神経節,後根,脊髄を一塊として摘出した.取り出した組織をOCT compoundに包埋し液体窒素で凍結して,厚さ6μmの凍結切片を作成した.この切片上で,E-cadherin,L1,NCAMおよびagrinの発現を免疫組織化学的手法により確認した.NCAM,L1は光顕的観察では,脊髄後根神経節,後根,脊髄上でびまん性に陽性であり,免疫電顕での観察では,ほとんどすべての無髄神経の軸索膜に陽性であった.E-cadherinは,光顕的観察で後根神経節の一部,脊髄後角の第II層で陽性であり,免疫電顕での観察では,無髄神経線維の一部(約20%)に陽性であった.また,agrinに関しては,光顕的観察において脊髄後角内でわずかに陽性であった.これまでの研究から,E-cadherinは,一部の無髄感覚神経線維に陽性であることが確認されており,痛覚伝導路形成に重要な役割を果たしていると推測される.一方,agrinはneuromuscular junctionにおけるacetylcholine receptorの集簇を司る細胞外基質であるが,最近中枢神経系においても一部のneuronに陽性であることが報告されている.今のところ,脊髄後角でのagrin陽性の所見が,どの種類の細胞由来かは不明だが,免疫電顕の手法によりagrin発現細胞の確認を行い,その細胞とE-cadherin陽性無髄神経線維との関係を明らかにし,痛覚伝導路形成における両者の役割を解析する予定である.
|