研究概要 |
【目的】Rab familyは低分子量GTP結合蛋白質であり、その中でもRab3は神経細胞や内分泌細胞に発現し、特に下垂体前葉細胞においては分泌顆粒の開口分泌に関与していると考えられている。今回我々は、正常ヒト下垂体および下垂体腺腫におけるRab3蛋白の発現を免疫組織化学(IHC)を用いて検討した。【方法】剖検にて得られた正常ヒト下垂体5例および下垂体腺腫114例に対し抗Rab3抗体用いIHCを施行した。また下垂体腺腫においては、免疫電顕(post-embedding法)にて細胞内局在もあわせて検討した。【結果】正常ヒト下垂体前葉細胞においてRab3は細胞質に顆粒状に陽性を示した。下垂体腺腫におけるRab3陽性例はGH産生腺腫22/22(100%)、PRL産生腺腫7/21(33.3%)、ACTH産生腺腫10/14(71.4%)、TSH産生腺腫4/7(57.1%)、非機能性腺腫28/50(56.0%)〔うちGonadotropin陽性例10/20(50.0%)〕であった。Rab3陽性を示した症例は免疫電顕において分泌顆粒の限界膜近傍での局在が確認された。【結論】ヒト下垂体前葉細胞にRab3の発現が確認された。下垂体腺腫においては一般的に分泌顆粒の多いGH産生腺腫に高率に陽性を示し、免疫電顕の結果もふまえ分泌顆粒を介してのホルモン分泌制御に関与していることが示唆された(以上の内容はMordern Pathologyに掲載予定である)。現在、Rab3にはRab3A,3B,3C,3Dという4種類のisoformが知られており、Rab3A,3Bの下垂体における発現が確認されている。今後それぞれのtypeの下垂体細胞・腺腫によってRab3 isoformの発現に差異が見られるかをRT-PCR、in situ hybridization法などを用いて検討する予定である。
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