ラット実験モデルの作成:Wister Rat(12週齢)を用いて以下の実験を行った。 麻酔下に両膝関節部の大腿骨遠位側を切除して、ステンレスインプラントを挿入した。一側を磨耗粉注入側とし、対側をコントロールとして挿入2週後から毎週、磨耗粉を術後8週まで注入した。磨耗粉は、平均粒径が3ミクロン、30ミクロンのポリエチレンで、粒子を超音波処理にて同種血清に拡散後、マイクロシリンジにて膝関節内に注入した。術前、術直後、及び術後は4週毎、12週までマイクロレントゲンダラム撮影装置にて骨溶解の程度を観察したところ、ポリエチレン注入群において、インプラント周囲に著明なオステオライシスが観察された。この反応は、粒径3ミクロンの群において強い傾向があった。術後12週で摘出した大腿骨の硬組織標本を作成し、蛍光顕微鏡で観察した結果、コントロール群では、インプラント周囲に僅かな新生骨の形成のみが見られたが、ポリエチレンを入れた群では、インプラント骨周囲の骨吸収と共に旺盛な新生骨形成との骨の再編も同時に起こっていることが判り、局所での骨形成性ならびに吸収性の複雑な骨動態が存在することが明かとなった。現在、このモデルを用いて、採取した硬組織ならびに関節滑膜組織から核酸を分離抽出して、骨代謝に関係するサイトカインと蛋白分解酵素の局所動態を観察中で、平成11年度は分子生物学的な検討を主として行う予定である。
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