研究概要 |
ヒト椎間板の手術検体においては各手術検体から十分な細胞が得られない上、変性の著しいものから分離した細胞は培養しても増殖し得なかったことから、今回健常な牛尾椎椎間板を材料として用いることとした。屠殺直後に採取した牛尾椎椎間板より髄核、線維輪の細胞をコラゲナーゼ処理によりそれぞれ分離し、単層培養してIGF-1 100mg/mを添加したものとしないものの培養細胞からRNAを抽出し、IGF-1刺激による他のgrowth factorのmRNA発現をRT-PCRで検討した。牛のgrowth factorのうちRT-PCRに用いるプローブの塩基配列が明らかになったものはTGF-βのみ(F:AATGAAGTCTAGCTCGCACAG,R:GGAACTGAACCCGTTAATGTC)であった。これについては髄核、線維輪ともIGF-1添加、非添加の培養細胞のいずれにおいてもTGF-βmRNAが発現されていたが、その差を定量的に評価することはできなかった。また単層培養でconfluentに達したのちアルギネートビーズに細胞を封入し、3次元培養を行った上、独自に製作した静水圧負荷チャンバーを用い圧負荷をかけた場合にもTGF-βmRNAは圧負荷の有無にかかわらず検出され、その差を明らかにすることは今回の実験においては出来なかった。椎間板細胞を周囲の豊富な細胞外基質から分離し培養する過程において細胞内では既にgrowth factorの産生がなされ、培養後の操作によって生じる可能性のあるgrowth factor発現の差を検出するにはさらに精密な評価方法を用いる必要があると考えられた。
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