我々は、自家鍵移植による膝前十字靭帯(ACL)再建後の基質再構築機構を明らかにするために、本動物実験を開始した。以下に、術後、経時的に観察を行った結果を報告する。 1.関節可動域:術後ほとんどの犬が跛行を呈していたが2週目以降は全例ほぼ正常な歩容となっていた。静脈麻酔下に関節可動域をみると術後1か月では屈曲、伸展ともやや可動域制限を認めたが、3か月以降は健側と同じ可動域まで回復していた。 2.膝関節の安定性:前方引き出しテストにて安定性を確認した。術後1か月では可動域制限を認めるため十分に評価できなかったが、明らかな不安定性は認めなかった。3か月目以降もいずれの犬でも明らかな不安定性を認めなかった。3.標本の肉眼的観察所見:それぞれの犬から再建ACL、正常ACL、正常PT、正常STGを持取した。1ヶ月標本の再建ACLは、光沢のない白い浮腫状の靭帯様組織が大腿骨、脛骨間に架橋され、脛骨側前面は、滑膜でおおわれ太くみえた。緊張は良好であった。3ヶ月標本の再建ACLは白濁色の太く、表面はまだ浮腫状で一見強固な靭帯を認めた。滑膜は移植靭帯を脛骨中央部分まで増殖付着していた。6ヶ月標本では、正常靭帯のような光沢は認めないものの浮腫は消失し、白濁色の太くて強固にみえる靭帯を認めた。9ヶ月、1年と経過した標本は6ヶ月時採取した標本と肉眼的には大きな差を認めなかった。以上の採取した標本で、靭帯の主要成分であるコラーゲン分析を行うことで、移植鍵の基質再構築過程を今後、観察していく予定である。
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