本研究はBMPsの軟骨分化におけるシグナル伝達機構を明らかにするために、in vitroのアッセイを立ち上げ、解析を行なうことを目的としている。現在までBMPsのシグナル伝達分子として、6種類のレセプターと6種類のSmadが知られている。それぞれの分子の役割分担については不明な点が多く、その解析は困難である。Decapentaplegic(Dpp)はショウジョウバエのBMPホモログであり、BMPシグナルと類似性があり、その機構はよりシンプルである。Dppのシグナル伝達系を解析することは、BMPの機能解析に大変役に立つと考えられる。申請者らは、ショウジョウバエにおけるDppのシグナル伝達系について生化学的に検討し、以下の知見を得た。まず、特異型SmadであるMadがシグナルのない状態ではmonomerとして存在し、I型レセプターTkvによってリン酸化を受けるとoligomerを形成することを明らかにした。さらに共有型Smad、Medeaをクローニングし、Medeaはリン酸化Madと複合体を形成し、核内に移行することを明らかにした。そして、抑制型SmadであるDadが恒常的に活性型I型レセプターに結合し、MadがI型レセプターに結合するのを競合的に阻害し、それ以降のシグナル伝達系をoffにすることを明らかにした。以上、ショウジョウバエにおけるDppのシグナル伝達系を生化学的検討を解析し、新しいモデルを提唱した。これは、哺乳類のBMPシグナル伝達の解明にたいへん役立つと考えられる。
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