平成10年度は、経頭蓋超音波ドップラー(TCD)を用いて、炭酸ガスのステップ状負荷に対する脳血流量の変化を連続的に測定し、これに対する麻酔薬(笑気・プロポフォール)の影響を検討した。 健常成人を対象に、炭酸ガス負荷に対するダイナミックな脳血流量の変化に対する30%笑気吸入の効果を調べた。連続的な脳血流変化に数理モデルを当てはめ解析したところ、30%笑気吸入はベースラインの脳血流量を増加させるが、炭酸ガス負荷に対するダイナミックな脳血管拡張反応には影響しないことが判明した。この結果は、麻酔誌(Anesthesia & Analgesia)に投稿中である。 また、予定手術患者(20-40才の健常者)を対象に、炭酸ガス負荷に対するダイナミックな脳血流量の変化に対するプロポフォール(10mg/kg/hr静注)の効果を調べた。上記と同様の解析を行い、プロポフォールはベースラインの脳血流量を減少させるとともに、炭酸ガス負荷に対するダイナミックな脳血管拡張反応を遅延させる可能性を示した。この結果は、日本麻酔学会で発表予定である。 これまで、スタティックな面でしか解明されていなかった脳血管の炭酸ガス反応性をダイナミックな面から明らかにし、これへの麻酔薬の影響が解明された。平成11年度は、動脈圧の変化に対する脳血流量の自動調節能を、ダイナミックな観点から明らかにし、これへの種々な麻酔薬の影響を検討する予定である。
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