交感神経系において、神経伝達物質としての役割を担っているNOに局在性や特異性があるのかどうかを、節後神経細胞が標的とする器官からの逆行性標識を利用して推察を行った。200〜250gの雄ラットを対象とし、標的器官として前肢皮膚、前肢血管壁、気管壁、顎下線、顔面皮膚を選択。それらに神経標識物質(5%麦芽凝集素レクチン-西洋ワサビペロキシダーゼ溶液、以下WGA-HRP)を注入後、交感神経節(上頸神経節、星状神経節)を取り出し、NO合成酵素陽性の神経線維をNADPH-diaphorase反応により発色させることで、標的器官によるWGA-HRP標識性の違いと、それぞれに対するNO合成酵素陽性神経線維の関連を観察した。 WGA-HRPにより標識された神経細胞数から考えると、ラットにおける交感神経節後神経線維の分布様式は、頭側より尾側に向かって、 上頸神経節 ⇒ 脳内血管、頭部、顔面(皮膚) 星状神経節 ⇒ 頸部血管系(総頸、外頸動脈を除く)、前肢血管系 と大まかに分類されると考えられる。また、節後神経細胞の周囲に発色するNO合成酵素陽性の神経線維群の密度によって、WGA-HRP標識細胞を3段階に分類しその比率を比較した結果、特に前肢においてNO合成酵素陽性の節前神経線維に取り囲まれる節後神経細胞の比率が高かったことから、前肢の血管拡張あるいはその皮膚構築に関して、NOが特異的な役割を担っている可能性があると推察された。しかしながら、具体的な機能性の面では未だ不明確であり、副交感神経系や知覚神経線維との連絡という面からの探究が必要である。
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