研究概要 |
平成10年度は交感神経活動をヒトにおいて直接記録するマイクロニューログラフィー法の記録環境の整備,および記録できる神経の場所の同定に重点を置き研究を行った。マイクロニューログラフィー法で使用するタングステン微小電極は抵抗値3〜5MΩという非常に高いインピーダンスであり,また,記録される交感神経活動は約50μVという非常に微弱なものである為,周囲環境からの交流雑音を遮断することが重要になる。具体的には1)タングステン微小電極とプレアンプ間の距離を極力短くする,2)タングステン微小電極とプレアンプ間のコードにアルミホイルを巻く,3)ボディーアースとして手術用対極板を用いる等の事項が雑音の軽減に有効であるとの知見を得た。従来報告されている,マイクロニューログラフィー法で交感神経活動を導出できる神経として,脛骨神経,腓骨神経,尺骨神経などがある。また,マイクロニューログラフィー法で記録できる交感神経活動は筋肉内の血管平滑筋を制御し全身の血圧制御にあずかる筋交感神経活動と皮膚血管,汗腺を制御し体温調節にあずかる皮膚交感神経活動に分類される。我々の研究の結果,脛骨神経では筋交感神経活動と皮膚交感神経活動の両方を記録できるが,尺骨神経では筋交感神経活動の記録が難しいことが判明した。これは前腕では下肢ほど筋肉が発達していないことが関係していると考えられる。今年度の研究成果を生かし,来年度は星状神経節ブロック時に筋交感神経活動を導出し圧受容器反射への影響,及び体温調節への影響を研究する予定である。
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