カルシウム流入チャネル分子をクローニングするにあたりtrp(transient receptor potential)をモデルにした。Trpとは盲目のショウジョウバエ自然変異の原因遺伝子として光受容細胞から発見されたものであり、その変異体の網膜電位をみると細胞外液のカルシウム依存性の持続相を欠くのが特徴である。すなわち細胞内のカルシウムストアを枯渇させるような細胞外からの刺激の後におこる細胞内へのカルシウム流入に関与している分子である可能性が考えられた。この分子のアミノ酸配列を元にしてPCR法により血管内皮細胞のcDNAからショウジョウバエtrpに類似した分子の部分シークエンスを得た。分子の全長を得るため血管内皮細胞のcDNAライブラリのスクリーニングを行い2種類の分子を得た。すなわち981アミノ酸、869アミノ酸の長さの2クローンで短い方は長いほうの302番目から413番目のアミノ酸が欠落したおそらくaltemative spliceformであると考えられた。疎水性分析により欠損部は2つの膜貫通領域に相当し、長いほうが6回膜貫通型、短いほうが4回膜貫通型であることが推定された。これらの分子の機能を調べるためcRNAをアフリカツメガエルの卵母細胞にマイクロインジェクションにより強制大量発現させたところthpsigarginn刺激により細胞外からのカルシウム流入が著明に増加し容量依存性カルシウム流入チャネルの性質を持つことを示す結果を得た。(研究発表1)容量依存性カルシウムチャネルを電位依存性カルシウムチャネルや受容体依存性カルシウムチャネルのようなその他のカルシウム流入チャネルと区別するためにの薬物感受性の違いについても検討している。(研究発表2)容量依存性カルシウムチャネルは単一のものではないと考えられており今回クローニングしたチャネルの薬理学的位置づけを検討している。
|