バソプレシン(Vp)のヒト血管に与える影響を摘出されたヒト胃大網動脈より作製した血管リングを用いて検討した。Vp(50-500pg/mL)は、ヒト血管を内皮非依存性に濃度依存性をもって収縮させた。また、VpはNEによる血管収縮を血管内皮の有無に拘らず増強した。 エンドドキシンに曝露されたヒト血管は、NEによる血管収縮を減弱させたが、NO阻害剤であるL-NAME及びL-NoArgにより拮抗された。一方、エンドドキシン曝露によりVpによる直接的血管収縮及びNE収縮に対する増強効果はいずれも減弱したが、Vpによる減弱したNE収縮に対する増強効果はNO阻害剤と同程度に強力であった。 今回の研究結果からVpは減弱したNE収縮増強作用を有することが確認された。また、Vpはエンドドキシン曝露後にもNE収縮を増強することが確認され、エンドドキシンショック患者の昇圧薬としての可能性が示唆された。 今回の実験結果を踏まえ、敗血症ショック患者で従来の治療法に抵抗性を示す重篤な低血圧状態にVpを投与し循環動態の変化を臨床サイドで観察し、Vpのショック治療薬としての有用性を検討中である。
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