研究概要 |
はじめに:nociceptinは1995年に存在が確認された内因性のオピオイドペプチドの一つであり、発見当初はマウスのtail-flick testで脳室内投与において痛覚過敏を引き起こすという報告や、ラットの脊髄腔内投与においては容量依存性に侵害刺激に対する屈曲反射が抑制されるという報告があり、疼痛に対する作用についてはいまだ不明な点が多い。巨細胞性網様体核(NRGC)および視床外側中心核(CL)は痛覚の上行性経路の一つであるMedial pain pathwayに存在し、いずれも、免疫組織化学において抗nociceptin抗体で染色されることが報告されている。 方法:我々はラットの尾部を機械刺激し、誘発される神経細胞の発火をNRGCおよびCLで記録し、nociceptinの侵害刺激反応に対する作用を検討した。 結果:(1)NRGCで記録された機械的侵害刺激反応ニューロンは高閾値作動性で、post stimullus discharge(PSD)を伴っていた。(2)CLで記録された機械的侵害刺激反応ニューロンもNRGCと同様の特徴であった。(3)orphanin FQ(100ng)脳室内投与は侵害刺激で誘発されるニューロンの発火頻度を抑制し、PSDも同様にられた。(4)nociceptin(30ng)はCLにおいて侵害刺激に反応するニューロンの誘発発火頻度を増加させ、psDの持続時間を延長させた。(5)morphine(NRGC50μg,CL30μg)は侵害刺激ニューロンの発火とPSDをNRGC,CL両方の核において抑制した。 結語:我々はMedial pain pathway上のNRGCおよびCLでの機械的侵害刺激反応ニューロンへのnociceptinの作用が異なることを明かにした。この結果からnociceptinは上位中枢と脳幹部より下位中枢での効果が異なることが示唆された。 ラットをもちいた慢性実験で行動学的に脊髄腔内投与が侵害刺激逃避学習に対して如何なる作用を及ぼすか検討する。今後さらなるMedial pain pathwayの経路におけるoprphanin FQの作用を明かにする研究を継続してゆく予定である。
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