モルモットの三叉神経節や腰髄レベルの後根神経節において、約15-20%の神経節細胞がヒスタミン(Hl)受容体mRNAを発現しいるが、迷走神経下神経節において、そのmRNAの発現は認められなかった。モルモットの後根神経節においてイソレクチンB4(IB4)で標識されるニューロンは、全て無髄線維であり、Hl受容体mRNAを発現する細胞もまたIB4陽性であることから、これらの求心性線維は無髄であることが強く示唆された。しかしながら、これらのニューロンは痛覚の伝達に何らかの役割を果たすと考えられているサブスタンスP(SP)やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含有していなかった。これらの結果は、Hl受容体mRNAを発現する一次知覚ニューロンは無髄求心性線維ではあるが侵害受容性でない可能性があることを意味する。このことについて、神経毒の一つで侵害受容性の求心性線維を変性させる効果のあるカプサイシンを用いて検討した。モルモットの新生仔期にカプサイシンを投与しておくと、CGRP陽性細胞はほとんど認められなくなったが、Hl受容体の遺伝子発現やその陽性細胞の割合はカプサイシンの影響を受けなかった。つまり、Hl受容体mRNAを発現する一次知覚ニューロンはカプサイシン感受性ではないことが示唆された。また、坐骨神経を傷害させておくと、正常において発現していたHl受容体mRNAのシグナルは弱くなり、新たに別のグループの神経節細胞(約50-60%)がHl受容体mRNAを発現するようになった。この新たにHl受容体mRNAを発現するようになった細胞には多くのSP/CGRP陽性細胞が含まれていた。これらの結果は末梢神経障害によってHl受容体mRNAを発現する細胞の少なくとも一部は侵害受容性ニューロンであることを示唆する。
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