既にこれまで、15-20%の後根神経節細胞がヒスタミンH1受容体mRNAを発現していること、これらの細胞は無髄線維を有する小型細胞であること、神経ペプチドであるサブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含有しないこと、末梢神経障害後、新たにH1受容体mRNAが発現すること等を報告してきた。そこで、H1受容体mRNAを発現するニューロンのカプサイシン感受性についてIn Situハイブリダイゼーション(ISH)法等を用いて検討したところ、これまで報告がなかったカプサイシン感受性及び非感受性のニューロペプチドY(NPY:神経ペプチドの一種)陽性後根神経節細胞が新たに見い出された。これらの陽性構造は、実験に用いた抗NPY抗体と合成NPYを混合して後根神経節の凍結切片をインキベートすることで消失した。また、抗NPY抗体はNPYファミリーを形成するpancreatic poplypeptideやpeptide YYを認識しないことも分かった。後根神経節の約40%の細胞がNPYに陽性を示し、全てこれらは小型の細胞(<30μm)で、IB4(イソレクチンの一種)に陽性であった。これらのことから、NPY陽性細胞もまた無髄線維を有するものと思われる。これらのNPY陽性細胞のうちカプサイシンに感受性を示すものは約1/3で、CGRPを含有することが示唆された。一方、カプサイシンに感受性を示さないものは、H1受容体mRNAを発現することが分かった。つまり、H1受容体mRNAは、カプサイシン非感受性の無髄線維で、NPYを含有する後根神経節細胞に発現することが分かった。末梢神経障害後にH1受容体mRNAを新たに発現する細胞は、カプサイシン感受性のNPY陽性細胞であることが示唆された。
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