研究概要 |
研究結果:胸腺組織像:H.E.染色では,FK506投与ラットにおいて胸腺の髄質部分の著しい縮小を認めた。萎縮は髄質全体に及んでいたが,もともとの髄質の残存部にエオジンに淡染する太い繊維様の部分を認めた。DSG投与ラットでは主に胸腺皮質を萎縮させた。 免疫組織化学:a)CD4,CD8,Thy-1.1:対照群では,CD4,CD8,Thy-1.1はほとんどの胸腺皮質細胞で陽性にあり,陽性細胞の局在にもはっきりとした傾向は認めなかった。FK506投与群においても,CD4,CD8,Thy-1.1はほとんどの細胞に陽性であった。陽性細胞の局在にははっきりした傾向は認められなかった。b)MHC class I,MHC class II:対照群の胸腺では髄質を中心にMHC classIおよびMHC class IIが強陽性に染まった。FK506投与群の胸腺では,MHC class IおよびMHC class II強陽性の髄質部分が萎縮し,ほとんど消失した。皮質においては,対照群の胸腺ではMHC class IおよびMHC class IIは弱陽性に染まったが,FK506投与群では,MHC class II陽性領域のFK506投与による著明な縮少を認めた。萎縮は特に被膜下,血管周囲に著しく,MHC class II陽性領域はまだら状となった。 まとめ:FK506,DSGをラットに投与し,胸腺,脾臓について検討し,次の結果を得た。 1)FK506投与ラットにおいて胸線上皮性細網細胞の障害がみとめられた。2)FK506は,胸腺細胞の分裂には影響を及ぼさず,胸腺細胞数の減少は,移住や動員に影響している可能性が示唆された。3)in vitroおいて,FK506は胸腺上皮性細胞の増殖に影響を及ぼさず,in vivoとin vitroでの作用の違いが見られた。4)FK506は,胸腺内の伝達物質を介して上皮細胞に影響している可能性が示唆された。5)DSGは,胸腺皮質を萎縮させた。
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