研究概要 |
1941年,Huggins and Hodgesの報告以来、進行性前立腺癌に対する内分泌療法の有用性は確立している。しかし治療経過中に多くはホルモン不応性となり,一度ホルモン不応性となると有効な治療法はなく,前立腺癌におけるホルモン耐性機構の解明とともに抗癌剤,放射線耐性の克服が待たれている。ホルモン非依存性前立腺癌では抗癌剤(CDDP,VP-16),放射線によりNF_kBが活性化され,種々のサイトカイン(ことにIL-6),成長因子の発現の誘導がみられ,これが治療抵抗性の原因であることが推察されてきた。さらにNF_kBはP53と拮抗し,アポトーシスへのpathwayを阻害することも推察されている。本研究ではこれらを明らかにし,抗NF_kB活性化阻害剤が放射線,抗癌剤の効果を増強できるか否かを検索し,治療に応用することを目的としている。 本研究において、これまでに明らかになったことは以下の3点である。 1)ホルモン非依存性前立腺癌細胞株PC-3,DU145において抗酸化剤でもあるNF_kB活性化阻害剤N-acetyl-1-cystein;NACがアポトーシスを誘導しうること、2)ホルモン非依存性前立腺癌細胞株の抗癌剤耐性はNF_kBの活性化が大きく関与しており、このとき、チオレドキシンの発現増強がみられ同時にIL-6の発現増強がみられること、3)前立腺癌細胞に抗癌剤(VP-16,CDDP)を投与するときNACを併用するとIL-6mRNA、蛋白、チオレドキシンの発現が抑制され癌細胞に対する殺細胞効果が用量依存的に増強すること等である。これらの結果より、抗NF_kB活性化阻害剤(金製剤も含め)の単独投与、抗癌剤との併用、血管新生因子抑制剤との併用がホルモン非依存性前立腺癌治療に有効であることが示唆された。
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