研究概要 |
平成10年度の研究で、相対的RT-PCR法によりRANTES、MIP-1β、IP-10、MIGの4種類で腫瘍特異性に高発現を認めた。また治癒切除後chemokine発現の高い群で非再発率が高かったことから、この4種類のchemokineが抗腫瘍作用と関係があることが示唆された。しかし、RANTESは腫瘍浸潤細胞に強い発現を認めたため、平成11年度は抗腫瘍作用のメカニズムの検討を腫瘍より発現していると考えられるMIP-1β、IP-10、MIGの3種類で行なった。まず採取組織より蛋白を抽出しELISAを行い、RT-PCRの結果とを比較した。3種類のchemokineいずれも、mRNAレベル、蛋白発現レベルの発現高低が相関しており、mRNA測定が正しい結果を反映していることを確認した。次に全例でCD8陽性細胞の腫瘍内浸潤を検討し、IP-10(R=0.62,p<0.01)、MIP-1β(R=0.69,P<0.01)と有意な相関関係が認められた。そこで腫瘍内より単核球を抽出し、migration assayを行なった。IP-10が最も相関性が高いことからIP-10のみで検討を行なった。これにより、IP-10濃度依存性で単核球の遊走が起こり、IP-10抗体によりブロックされた。以上より少なくともIP-10は、TIL浸潤に関与していることが示唆された。次に近年指摘されている血管新生抑制作用と比較するために、CD34による免疫組織染色を行ない毛細血管密度を測定した。これによるとIP-10がR=0.47,P=0.01と有意な負の相関関係を認め、血管新生抑制作用を有する可能性が示唆された。以上より、3種類のchemokine、すなわちIP-10、MIG、MIP-1βは抗腫瘍的に作用しており、これの発現が高い腫瘍は予後良好であることが示された。次の課題は、この抗腫瘍作用が腫瘍の悪性度そのものと関係するものか、あるいは術後に後療法として使用するインターフェロンの効果を増強しているものかを明らかにすることである。
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