ヒトパピローマウイルス16型E1蛋白(HPV16E1)の変異蛋白であるS330Rは野生型E1のHPVDNAの複製能に対し、dominant negativeに作用することがこれまでに明らかにされていた。このtransdominant functionがどのような機序で発揮されているかを明らかにするため、S330RにG482D、D438G、L494Q mutationをさらに導入し、double mutantを作成した。これらの変異体についてHPV16E1、HPV16E2、HPVDNA複製能、transdominant functionを検討した。S330R/G482Dはすべての機能を失っており、transdominantfunctionも持たなかった。S330R/L494QはE1、E2との結合能がかなり減弱しており、transdominant functionもないと考えられた。S330R/D438GはE1との結合能は野生型の約70%程度、E2との結合は野生型の約50%程度と減弱していたが、わずかながらtransdominant functionを有した。野生型の3倍量の変異体を導入したdominant negative activityのassayではS330RによりHPVDNAの複製は約20%に押さえられるのに対して、S330R/D438Gでは約65%であった。これらの結果からS330Rのtransdominant functionはE1またはE2との結合能を有するHPVDNA複製能を持たないmutantがE1-E2複合体またはE1-E1複合体に取り込まれるために起こっていると考えられた。現在は新たに作成したmutantについて検討中である。
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