精子と卵の結合・融合により引き起こされる卵細胞内カルシウム(Ca^<2+>)濃度の上昇は、第2減数分裂中期で静止状態にある卵の分裂の再開と表層顆粒(CG)の開口分泌を誘発する。そのCGは透明帯の性質を化学的に変化させ(透明帯反応)、その後の精子の透明帯侵入を阻止する。最初の精子が卵に接触する前にこの反応を惹起させることで避妊治療への応用が可能であると考えた。そこで、in vitroで透明帯反応を惹起(CG放出)させるために以下の実験を行った。L型Ca^<2+>チャネルアゴニストであるBay K 8644、PKC activatorであるTPA、OAGをマウス未受精卵と添加培養し、CGの分布や消失の有無を共焦点レーザー顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察した。また、N型Ca^<2+>チャネルブロッカーであるω-conotoxins GVIAを添加した培養液でマウスの体外受精を行い、多精子受精の有無やCGの分布を検討した。 Bay K 8644ではCGの放出は起こらなかった。2種類のPKC activatorでは、OAGでCGの放出が認められたが、TPAでは起こらなかった。また、ω-conotoxinsGVIAでの体外受精では、多精子受精は増加せず、CGもコントロール卵と同様な分布であった。 今回の検討より、L型Ca^<2+>チャネルやN型Ca^<2+>チャネルはCG放出に直接的には関与していないようである。PKCはCG放出との関与を示唆する多くの文献が存在する。TPAでCG放出が起こらなかった原因をTPAの濃度、細胞内Ca^<2+>濃度や上昇パターンから検討することが必要と思われた。
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