研究概要 |
子宮内膜症患者腹水中のinterleukin-8(IL-8)濃度は,110±10pg/mlであり非子宮内膜症患者の33±10pg/mlに比して高値であった.米国不妊学会の子宮内膜症臨床進行期分類とは相関がみられなかった.しかしながら,血管新生に富む初期の活動性の高い病変と考えられている子宮内膜症赤色病変について検討すると,その数と広がりはIL-8濃度と相関があることを明らかとなった.従って子宮内膜症の初期病変である赤色病変の進展は血管新生作用を有するIL-8と何らかの関連があることが示唆された.次に,患者の同意を得て手術時に摘出した卵巣チョコレート嚢胞から間質細胞を分離培養しRT-PCRおよびSourthern blot法によりIL-8受容体type B遺伝子の発現を認めた.間質細胞増殖はIL-8を添加し3H-thymidineの取り込みとMTT assayで検討した.IL-8を添加しなかったものに比してIL-8(100-200pg/ml)の添加は細胞増殖を有意に促進し,それぞれ最大1.8倍と1.3倍となった.そしてこの細胞増殖促進作用は抗IL-8抗体の添加で中和された.これらの成績から,IL-8は内膜症間質細胞の増殖促進作用を有していることが初めて明らかとなった.現在,子宮内膜症腹膜病変と卵巣チョコレート嚢胞におけるIL-8の局在とIL-8の細胞増殖促進作用における細胞内シグナル伝達に関して検索中である.
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