研究概要 |
平成10年度の研究は予定通り順調に履行されてきた. ヒト卵巣癌細胞株をもちいて,本邦新開発プラチナ製剤であるnedaplatin(254-S)を使用し,通常の一定濃度薬剤接触のみならず,ヒトphase studyで得られた臨床薬理学的因子(すなわち最高血中濃度,平均血中濃度,検出可能期間,半減期,血中濃度曲線下面積AUC)を用いてin vivoの薬剤濃度変化をin vitroで再現するような薬剤接触実験を行って抗腫瘍効果を調べている. この結果現在までに以下の項目が解明された. 1) プラチナ製剤においては,i)一定濃度薬剤接触実験,またii)段階的濃度変化にて薬理学的パラメータをシュミレートした薬剤接触実験,のいずれの場合においても,薬理学的パラメータ特性はcell survival,DNA障害,細胞周期およびapoptosisに関して抗腫瘍効果に影響を与えた. 2) このなかでce11 survivalに最も影響を与える因子はDNA cross link形成量である.cell survival fractionの対数は,閾値を有するcrosslink量との間には線形の関係が認められた. 3) 薬力学的効果は,従来いわれてきたようなAUC依存性を示さなかった.プラチナ製剤の場合には,cell survival,DNA障害,細胞周期およびapoptosisのいずれの評価項目に対しても,むしろcrosslink量依存性というべき薬力学的効果が認められた. したがって,今後は平成11年度に向けて,さらに実験データを蓄積しつつ,当初の予定に従って反応を記述する微分方程式モデルを作成していく予定である.
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