研究概要 |
1, 次の異常妊娠例を対象として胎児心拍数変動における基準心拍数、一過性頻脈の振幅、持続時間、発生比率の各要素の日内変動について正常妊娠例と比較し以下の知見を得た。 (1), 胎児仮死を認めない子宮内胎児発育遅延症例(妊娠28-39週)では各要素は正常妊娠と同様の日内変動を示すが一過性頻脈の振幅においては妊娠28-31週では日内変動が認められず、日内変動の発現時期が正常妊娠と比較して遅延する。 (2), インシュリン投与を必要としない、もしくはインシュリン投与によって血糖コントロール良好な正期の糖尿病合併妊娠5症例の解析では全ての要素において正常正期妊娠症例と同様の日内変動が認められた。 (3), 妊娠37〜39週の妊娠中毒症15症例の検討では基準心拍数、一過性頻脈の振幅、持続時間は正常正期妊娠と同様の日内変動を示したが、一過性頻脈の振幅は正常妊娠と比較して全ての時間帯で有意に低値を、持続時間は有意に高値を示した。 2, 母体心拍数モニター(polar herat rate monitor vantage NV)および当科で開発した無拘束胎児心拍数記録計を用いて正期正常妊娠5例の母体、胎児心拍数の同時収録を行い解析した結果、胎児基準心拍数は母体心拍数と有意な相関を認め同様の日内変動を示すが胎児持続性頻脈の出現と母体心拍数には関連は認められなかった。 今後は母体体動計(actigraph)のコンピュータインターフェースを導入し、母体の体動、生活パターンと母体心拍数、胎児心拍数の日内変動との関連を明らかとし、上記の異常妊娠において正常妊娠と比較した場合の変化を更に症例数を追加しつつ解析を進める予定である。
|