本年度ははじめにマウスを用いた実験的顔面神経麻痺モデルの作成を試みた。過去の報告に殉じた方法を用いたが、その結果、神経を直接圧迫して麻痺を発症させるモデル、および単純ヘルペスウイルスを耳介に擦過して感染させて麻痺を発症させるモデルを作成することができた。 次に免疫組織学的検討を行った。この結果、麻痺発症モデルにおいては病理学的には過去の報告にみられたマクロファージやリンパ球の浸潤像を認めることが確認された。さらにNADPH-diphorase染色と抗Nitrotryrosine抗体を用いた二重免疫組織染色を施行したが、正常コントロール群、麻痺発症群のいずれにおいても軽度の染染色を認め、明らかな有意差を認めることができなかった。現在さらに標本の作製法や染色条件の再検討を行っている段階である。 また同時にこれらの検体からmRNAの抽出も行った。購入したプライマーを用いてRT-PCRを施行したが、これでも、正常コントロール群、麻痺発症群のいずれにおいてもある程度の量のiNOSmRNAが検出され、麻痺モデルにおけるiNOSmRNAの過剰発現を確証させるデータは得られなかった。麻痺発症においてNOの過剰産制を認めることができなかった。従って、今後さらにプライマーの再設定、PCR条件を変更して分子生物学的検討を行う予定である。
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