白色ハートレイ系モルモットを用いて、実験的な虚血性顔面神経麻痺モデルを作成した。竹田らの報告に準じ、一側は側頭骨を削開し中硬膜動脈岩様部枝を切断し(麻痺側)、他側は側頭骨の削開を行うものの中硬膜動脈岩様部枝の確認のみを行い創を閉鎖し、コントロール側とした。この操作により中硬膜動脈岩様部枝側は、術後2から4週にわたり持続する顔面神経麻痺が観察され、一方コントロール側は麻痺の発症は観察されなかった。このモデル動物を用い、術後3日、7日、14日に両側の顔面神経頬筋枝を採取しNADPH-diaphorase染色と抗Nitrotyrosine抗体を用いた二重染色法で顔面神経内のiNOS発現を調べたところ、麻痺側顔面神経内にはほぼすべての標本で各採取日共にiNOS発現が観察されたが、採取日による変化は観察されなかった。一方コントロール側ではiNOS発現は観察されないものが多い結果であったが、一部の標本でiNOS発現が観察された。同時に行った、免疫染色によるサイトカインの発現に関する検討では、麻痺側において様々なサイトカインの発現が観察されたが、iNOSと同様にコントロール側においても少数ながらサイトカイン発現が観察された。このサイトカイン発現も、標本採取日による差違は観察されなかった。 これらの結果より、麻痺モデルとしては側頭骨削開による影響も考えられるが本麻痺モデルで顔面神経組織内にiNOS発現が観察されることが明らかとなったが障害の程度との関連、経時変化については不明である。またiNOSの発現とサイトカインの役割についても不明である。今後さらに実際の顔面神経麻痺に近いモデルの検討や、iNOS発現と顔面神経障害の進行との関連につき詳細な検討が必要である。
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