ヒト慢性副鼻腔炎症例における鼻茸、下甲介粘膜を用いて、ICAM-1、VCAM-1、P、E-Selectinなどの接着分子の発現と、好中球、好酸球をはじめとする浸潤炎症細胞の分布について免疫組織化学的に検討した。下甲介粘膜と鼻茸で差があるかどうか、またアレルギー合併例と非合併例、喘息合併例で差があるか検討した。 鼻茸においてICAM1は約30%、Selectinは約20%の血管内皮において発現していた。いずれも下甲介粘膜と比べて、接着分子の発現は強い傾向があるが、アレルギー合併例と非合併例との間に差はみられなかった。鼻茸上皮における、ICAM1陽性の強度とICAM1陽性血管の割合には強い正の相関関係が認められた。またICAM1陽性血管の割合とSelectin陽性血管の割合にも正の相関関係がみられた。 CD3、CD4陽性細胞は、喘息合併例を除き、鼻茸では下甲介粘膜より少ない傾向があり、アレルギー合併例では、下甲介粘膜より有意に減少していた。CD25陽性細胞は、アレルギー合併症例の鼻茸において下甲介粘膜より多く認められた。好中球、好酸球数は鼻茸、下甲介粘膜とも同じ程度であった。従来より、アレルギー合併例の鼻茸では、好酸球浸潤が著明であり、アレルギー非合併の鼻茸では、好中球浸潤が優位であると言われているが、実際には症例によりかなりのばらつきがありアレルギー合併例と非合併例との間に差は認められなかった。次に炎症細胞浸潤と血管内皮細胞における接着分子の発現の相関について検討した。好中球数とSelectin陽性血管の割合、CD25陽性細胞とICAM1陽性血管の割合との間に弱い相関が認められた。
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