研究概要 |
固形癌は正常組織に比べて低栄養、低酸素、低pHの状態にあり放射線抵抗性を示すことが知られている。一方温熱は、そのような腫瘍の環境のなかでも特に低pH条件下の細胞にたいして感受性が高いことが知られており、固形癌治療においては有力な治療法として期待されている。今回我々は、細胞にたいする温熱処理や一過性の低pH曝露によるp53依存型のアポトーシス誘導の可能性に関して、p53野生型ヒト大腸癌由来細胞(RKO.C)と、E6蛋白を導入しp53蛋白の機能をknock outした細胞(RC10.1)を用い比較検討した。 1) pH7.5加温(42℃,1h)→pH7.5培養での細胞温熱感受性ならびにアポトーシス誘導はRC10.1細胞の方が大きかった。 2) pH6.6加温(42℃,1h)→pH7.5培養による殺細胞効果の増大(pH効果)とアポトーシス誘導とは相関していたが、これらに対するp53細胞内蓄積量の関与は少ないことが示唆された。 3) 両細胞とも加温による細胞内BaxならびにBcl-2の蓄積量の変化は認められなかった。 以上より温熱による細胞死とアポトーシス誘導は、p53野生型で少ないこと、また温熱におけるpH効果にはアポトーシス誘導の増強が関与しているが、それはBaxやBcl-2を介したp53依存型ではないことが一部示唆された。
|