研究概要 |
1 研究材料として (1)手術で得られた下甲介粘膜を細切りし、培養液中でのtissue explantに成功した。(2)アレルギー性鼻炎の主症状である鼻汁過多の研究の対照としてスギ花粉に感作されているが発症していない人15名を検討しえた。(3)鼻過敏性をみる目的で健常者とアレルギー性鼻炎の2群で高張性食塩水での誘発を行った。 2 培養組織分泌成分の解析 培養液にて1日培養した後、リポゾームを用いたアンチセンス手法で、ムチンを多く分泌する疾患であるcystic fibrosisモデルを作成した。これらの培養粘膜からmRNAを抽出し、ムチンのコア蛋白のmRNAであるMUC4,MUC5B,MUC5ACの発現を検討し、cystic fibrosisモデルのみにMUC5Bの発現が増強した。このことから、ムチンのmRNAレベルでの量的増加が示唆された。今後は、培養液中に含まれる分泌成分からコア蛋白に付加される糖蛋白の解析ができれば、ムチンの量および質的変化が検討しえると思われる。 3 高張性食塩水による鼻粘膜誘発では、健常群とアレルギー性鼻炎群に有意な差はないが、低濃度での反応性がアレルギー群で過敏であった。アレルギー群での差が出ない背景にはシーズン外に検討したこともかんがえられた。 4 スギ花粉症の感作非発症者15名の検討ではRASTや皮内反応に発症者との差はなかった。また、この後のスギ花粉飛散期に初めて発症した者と非発症のままの2群にも差はなかったが、鼻汁粘膜の分泌機構を考える上でこの2群をより検討は有用な対象と考えられる。
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