酵母を用いたp53変異による機能異常を検出する方法を用いて頭頚部扁平上皮癌患者120名について解析した。120名中79名(66%)に変異を認めた。これは従来のPCR-SSCP法や免疫組織化学法による変異の解析に比べて高頻度であり、本方法は従来の方法に比べて高感度であることがわかった。その内訳は上咽頭癌6名中2名(33%)、中咽頭癌38名中23名(61%)、下咽頭癌12名中9名(%)、喉頭癌18名中12名(67%)、上顎癌13名中9名(69%)、口腔癌30名中21名(70%)、その他3名中3名(100%)であった。これらのうち中咽頭癌について様々な臨床的因子、放射線治療効果との関係や喫煙と飲酒歴の影響について調べた。38例の中咽頭扁平上皮癌のうち変異を認めるものは23例(61%)で、このうち免疫組織化学法で陰性であった症例が6例ありそのうち4例はframeshiftまたはnonsense mutationでありこのタイプの変異は免疫組織化学法では検出できにくいと考えられた。放射線治療効果はT2症例において40Gy照射時の縮小率で評価したがp53mutationを認める群の方が有意に放射線に対し抵抗性を示した。またp53mutationを認める群の方が有意に予後が悪かった。以上のことから中咽頭扁平上皮癌においてp53mutationを検出することは放射線治療効果の予測および予後因子として有用であることが示唆された。現在他の頭頚部癌についても同様の解析を行っている。またp53mutationの変異部位についてdirect sequencingを行っているところでありこの変異部位と臨床的因子、疫学的因子等との関係を調べている。
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