頭頸部扁平上皮癌においてのCD44変異体(CD44V)の発現と臨床病理学的因子どの関係を調べるため、他部位の癌で転移や予後と相関が示されているCD44v6(v6)、およびCD44v2(v2)に対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的検討行うとともに、In vitroにおいては頭頸部扁平上皮癌培養細胞を用いてCD44v6中和抗体添加による癌浸潤能の変化について検討を行った。【結果】頭頸部扁平上皮癌113例の原発巣の免疫組織学的検討では、v6の発現の低下が頸部転移率と、またv2の発現の低下が予後の低下と正の相関を示した。また、v6、v2の発現の低下はいずれも癌の分化度の低下と正の相関を示した。v6については、さらに新鮮凍結標本を用いて蛋白レベルで定量を行い、有意にv6蛋白の低下が頸部転移率と相関することを証明した。頭頸部扁平上皮癌培養細胞のうち、v6蛋白陽性細胞4種を用いたIn vitroのinvasionassayの検討ではCD44v6抗体添加により2種のcell lineにおいてコラーゲンゲル内への浸潤細胞数が増加する傾向が認められた。しかし、癌細胞運動能、増殖能には影響を示さなかった。【考察および今後の展望】頭頸部扁平上皮癌においてCD44v6、v2の発現は生物学的悪性度の指標になりうることが考えられた。さらに、CD44v6については局所浸潤能との関係が注目され、コラーゲン分解酵素発現調節への関与について検討して行く予定である。
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