久留米大学耳鼻咽喉科および関連施設でこれまで治療を行った口腔咽頭領域の腺様嚢胞癌64例を研究対象とした。原発部位は口腔19例、顎下線19例、耳下腺17例、舌下腺1例、上咽頭5例、中咽頭3例であった。TNM別では、T1が12例、T2が23例、T3が16例、T4が10例、NOが58例、Nlが5例、N2が1例、MOが57例、Mlが7例であった。全体の5年生存率は74%、10年生存率は48%であった。Stagc別では5年生存率は、stageIが83%、stageIIが88%、stageIIIが69%、stageIVが31%であった。これらの症例の中の41例を対象として好銀染色を行い、Argirophilic Nucleolar Regions(AgNOR)の染色を行った。その算定にはx100の油浸レンズを用い、100個の核内のAgNORs dotをカウントし平均値を計算して臨床経過と比較し検討した。局所再発があったものは14例で3.28、なかったものは27例で3.35と有意差を認めなかった。リンパ節再発があったものは11例で3.46、なかったものは30例で3.30と有意差を認めなかった。遠隔転移があったものは11例で3.52、なかったものは30例で3.25と有意差を認めなかった。組織学的grade分類ではgradeIは12例で3.03、gradeIIは18例で3.24となり、gradeIとgradeIII、gradeIIとgradeIIIの間で1%の危険率で有意にgradeIIIで多くAgNORのdotを多く認めた。以上のようにAgNORと組織学的gradeとの相関が認められ、AgNORが臨床的悪性度を類推する細胞内因子の1つと推察された。
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