(1) 目的:増殖硝子体網膜症(proliferative vitreoretinopathy;PVR)は、裂孔原性網膜剥離に続発し、網膜周囲および硝子体腔内に細胞増殖を伴う増殖組織が形成される病態で、裂孔原性網膜剥離の網膜復位を妨げる最大の原因である。最近、PVRに対する薬物療法が注目されるようになり、我々はヒアルロン酸ナトリウムに添加後硝子体内に投与したレチノイン酸が家兎PVRモデルにおいで増殖抑制効果を示すことを報告した。中空リポゾームは、薬物を封入しない空のリポゾームで、その中に薬物水溶液を封入することにより、簡単にリポゾーム製剤を作製することが出来、新しい眼内への薬物投与法として期待される。本年度の研究では中空リポゾームの網膜に対する影響を調べることを目的とした。 (2) 方法:対象はダッジ家兎を用いた。一眼にperfluoropropaneガスを注入し、ガス圧迫硝子体手術を施行した。中空リポゾームはコードソームEL-C-01(正荷電リポゾーム、日本油脂製)に注射用蒸留水を加え復水した。ガス注入4日目に中空リポゾームを0.1ml硝子体腔に注入した。手術後1ヶ月間、細隙灯顕微鏡による前眼部の観察、検眼鏡による眼底検査を施行した。 (3) 結果:前眼部の観察では明らかな異常を認めなかったが、眼底には下方硝子体腔に混濁を認めたが、検眼鏡的に網膜に異常を認めなかった。 (4) 考按:中空リポゾームの硝子体腔内へめ投与は可能であった。今回正荷電の中空リポゾームを用いたが、一部硝子体混濁を認めた。中空リポゾームには正荷電、弱負荷電、負荷電のものがあり、次年度はこれらとレチノイン酸の組み合わせと実験眼への影響、家兎PVRモデルでの抑制効果を検討してみたい。
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