研究概要 |
本研究の目的は、正常マウスでの坐骨神経移植および視神経再生能の評価法を確立し、これらの方法をbcl-2トランスジェニックマウスに適用して、Bcl-2が成体視神経の再生に果たす役割を明らかにすることである。 成体C57BL/6Jマウスで、坐骨神経片の網膜内インプラントまたは視神経への接合法を試みた。いずれの方法でも神経節細胞の軸索が移植神経の中を再生できることを、逆行性標識法によって確認した。移植4週後の軸索再生率は、インプラント法が接合法より著明に高く(1%,n=8 vs.0.1%,n=11)、再生細胞の平均細胞体面積は、インプラント法の方が有意に小さく(199.9vs.223.3umgeta2)正常の分布により近かった。この移植法による再生能の違いは、移植部位の違いによる神経栄養効果や軸索切断部位に依存した神経節細胞の細胞応答の相違など複数の要因によるものと思われる。次に再生神経節細胞のサブタイプを同定する目的で、まず正常網膜神経節細胞の形態分類を試みた。Lucifer yellowの細胞内注入で可視化された神経節細胞は、ラットでほぼ確立された3種類のサブタイプに分類できると考えられる。しかし今までは水平面のみの観察であり、今後網膜断面から樹状突起の分枝形態を分析して、水平面での分類が妥当かどうかを検討する必要がある。 本年度に確立した評価法で、bcl-2トランスジェニックマウスでの視神経再生能を評価した。坐骨神経接合による神経節細胞の軸索再生数は、野生型で最高228個に対しbcl-2マウスで658個と本マウスで再生数が増える可能性があるものの、両群間で有意差は見られなかった(Mdn=109,n=6vs148,n=7)。また再生率は、bcl-2マウスの正常細胞数が野生型の2倍なので、むしろbcl-2マウスの方が低いかも知れない。現在更に移植後の神経節細胞の生存率も検討中である。
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