平成10年度の目的であるVEGFの投与法と実験動物の眼血管の解析法の決定のため、種々の実験を試みた。 1. VEGFの投与法の決定局所投与法として硝子体腔内、全身投与法として経静脈的方法の検討を行った。硝子体腔内投与のため、家兎を用い、硝子体切除を行い、投与する方法を検討した結果、適切な術式により完全な後部硝子体切除が行え、経硝子体投与が可能であることが判明した。経静脈的全身投与法は大腿静脈より投与することで確実に一定量投与可能であった。 2. 眼内血管内皮解析法の決定網膜血管の内皮細胞の同定のため血管内腔より銀染色、レクチン染色を行った。網膜血管および虹彩血管の内皮細胞は明瞭に染色され、形態解析が可能であることが判明した。毛様体および脈絡膜血管の血管内皮細胞の形態解析の手段として、固定後ビブラトームを用い、50-100nmの切片を作成し、走査電子顕微鏡による観察を行った結果、明瞭な血管内腔の剖出、詳細な血管内皮細胞の観察が可能であった。毛様体および脈絡膜血管の血管内皮細胞の表面は無数のfenestraeを持ち、これらの定量的解析も可能と判断した。なお銀染色を用いた染色法は硝子体切除後の硝子体腔より染色を行うことで、従来観察不可能であったMuller細胞の硝子体側の2次元的配列の観察にも有用であることが判明した。 次年度よりこれらの方法を駆使し、血管内皮細胞におけるVEGFの血管透過性亢進の機序につきさらなる解析を行う予定である。
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