加齢に伴い、ヒトの網膜色素上皮細胞のリポフスチン顆粒の増加、Bruch膜の肥厚や構成成分の変化、脈絡膜毛細血管の萎縮などの変化がみられることが報告されている。 今回の研究では、ラットの硝子体に蛋白分解酵素阻害剤であるE-64を注入するモデルを、注入回数や動物を固定するまでの時間を違えて作成し、網膜や脈絡膜に加齢に類似する変化を生じさせることを目的とした。 電子顕微鏡で観察した結果、1回の薬剤注入では、網膜色素上皮にリポフスチン様顆粒が一過性に増加し、その他の変化を来たさなかったのに対して、数回の注入では、不可逆的な病理変化を来たした。すなわち、網膜色素上皮内にリポフスチン様顆粒の増加、オートファゴソームの増加、網膜色素上皮の萎縮、Bruch膜への線維芽細胞や周皮細胞突起の侵入、毛細血管の萎縮、さらには視細胞の萎縮など、ヒトにみられる加齢変化に類似する病理変化が観察された。なお、脈絡膜新生血管は観察されなかった。 一般に、加齢黄斑変性症は、加齢変化の延長上に位置しているとも考えられていることから、これらの実験モデルの結果を基礎にさらに改良を加えれば、加齢黄斑変性症の動物モデルになる可能性が得られた。 これらの成果をInvestigative Ophthalmology and Visual Scienceに投稿し、現在、再査読中である。
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