研究目的:甲状腺眼症における眼窩後組織に存在するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(以下CSP)の変化をみるために、高解像度のミリレベルプロトンMRスペクトロスコピー(以下MRS)を用いて眼窩脂肪内の代謝解析を試み、分子レベルにおける甲状腺眼症の活動性の評価を研究テーマとした。 結果:1.in vitroにおいてCSPのMRSにおける中心周波数を測定したところ5.24ppmにピークを得た。 2.甲状腺眼症23例36眼(男性6例.女性17例)、年令15〜66歳(平均43.21±13.72歳)、健常者16名28眼(男性4名.女性12名)年令24〜56歳(平均38.25±10.60歳)にインフォームドコンセントを得て、MRSを測定したところ、甲状腺眼症群におけるCS:水のピーク比は0.2874±0.1357であり、正常群の0.1781±0.948に比べ有意に大きい結果が得られた。 3.甲状腺眼症5例についてMRSで得られたCS:水のピーク比を縦軸に、また実際に手術で得た脂肪をELISA法にて解析して得たCSPの吸光度を横軸に示したところr=0.69で両者は相関している結果を得た。 これらの結果から、MRSによって眼窩後組織中のCSPの同定が可能である。 また、今回の対象となった甲状腺眼症36眼をアメリカ甲状腺学会の甲状腺眼症の重症度分類にて内訳し、MRSで得たCS:水のピーク比との関係を解析したところ、ピーク比の増加は重症度(特に眼球運動障害)と関連性があるという結果を得た。 結論:MRSは甲状腺眼症の活動性評価に有用な新しい検査法である。
|