平成10年度の研究として角膜移植拒絶反応時における移植片内サイトカイン分泌パターンの検討を行い、以下の結果を得た。 C57BL/6マウスをドナーに、BALB/cマウスをホストに用いて角膜移植を行った。移植後7日目まで全ての移植片に軽度の混濁が認められたが14日目には透明生着した。しかし、21日から28日目にかけて約半数の移植片に混濁が生じ、これらの移植片混濁は56日の観察期間中改善は認められなかった。この結果より、移植後7日目に認められた混濁は移植による非特異的炎症であり、21日目から28日目に認められた混濁は移植片への拒絶反応であると考えられた。そこで、移植後7日目、及28日目に移植片をふくむホスト角膜を摘出し、角膜組織内に含まれるサイトカインの定量をおこなった。検討したサイトカインは非特異的炎症性サイトカインであるIL-1、TNF-α、細胞性免疫の代表的サイトカインであるIL-2、IFN-γ、液性免疫の代表的サイトカインであるIL-4、IL-10であった。その結果、移植後7日目では角膜組織内にIL-1およびTNF-αの増加が認められたのに対し、28日目では拒絶された移植片を含む角膜組織のみに、IL-2、IFN-γ、IL-1の増加が認められた。これらの結果は、術後7日目においては非特異的炎症性サイトカインの分泌が移植片内で増加し、マクロファージやランゲルハンス細胞等の抗原認識に関与する細胞の移植片侵入を促しており、移植片の拒絶時にはIL-2、IFN-γを分泌するT細胞が移植片内で増殖し、細胞性免疫を活性化させていることを示唆しているものと考えられた。
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