研究概要 |
角膜上皮欠損、アルカリ外傷、穿孔等の角膜障害が周囲の上皮および実質細胞にどのようなシグナルを送り各種細胞性癌遺伝子が発現しているかを明らかにするため、ラット角膜を用い、創作製後のc-Fos,c-Jun蛋白の発現を、免疫組織化学法を用いて検討した結果、創作製後1〜2時間後に上記蛋白の発現が創周辺部角膜上皮および実質のkeratocyteに一過性に認められた。このことから、上皮遊走がおこる前の角膜においても上皮遊走に備えた、何らかの転写活性の上昇が起こっていることが示唆された。 また、マウスを用い、胎生期および発育過程における上記蛋白の発現についても免疫組織化学法を用いて検討した。その結果、胎生期から生後10日目までの角膜上皮に、c-Fos蛋白の発現を認め、胎生期から生後5日目までの角膜上皮に、c-Jun蛋白の発現を認めた。細胞分裂が活発な重層化していない角膜上皮に上記蛋白の発現が認められたことから、上記蛋白が角膜の発生、分化に何らかの影響をあなえていることが示唆された。 糖尿病では、角膜創傷治癒が遅延することがしられでいるが、インスリン非衣存性糖尿病ラットを用い、角膜上皮欠損作成後のc-Fos,c-Jun蛋白の発現を、免疫組織化学法を用いて検討した結果、創作製後1〜2時間後に上記蛋白の発現が創周辺部角膜上皮および実質のkeratocyteに一過性に認められ、コントロール群と差が見られなかった。このことから、糖尿病の角膜においても正常角膜と同様に、創傷治癒にそなえた何らかの転写活性の上昇が起こっていることが示唆された。現在、インスリン依存性ラットについても検討している。
|