研究目的:ヒトの網膜から視覚一次中枢までにおける視覚情報の並列処理の過程を分離して機能評価する。黄斑部を中心に視角約30度の範囲を60から100に分割し、それぞれの局所網膜に対応する視覚誘発電位を記録することにより視覚一次中枢におけるretinotopic responseを解析する。これにより黄斑部からの情報処理過程(主としてparuvocellular-pathway)と周辺網膜からの情報処理過程(主としてmagunocellular-pathway)の機能評価を検討する。 対象および研究方法:対象は眼疾患を持たない健康な男女。充分なインフォームドコンセントをとり被験者とした。網膜局所に対する視覚誘発電位の記録は多局所網膜電図解析装置(VERISII:トーメー社製)を視覚誘発電位記録用に改造し施行した。刺激画面は視角約30度の範囲を103カ所および60カ所のエレメントに分割し、約4分間から8分間の記録を行った。pseudorandamをもちいたm-sequence法のアルゴリズムで解析を行い、各エレメントの刺激に特異的な反応の抽出を行った(多局所視覚誘発電位)。 結果(本研究によって得られた新しい知見):(1)視野の中心10度以内の視覚誘発電位の反応は非常に大きく位相もそろっているのに対して15度以上では場所により波形が異なる事。(2)15度より周辺での反応では視野の上半分と下半分で極性が逆向きになっている事。(3)比較的視野の下側のほうが反応性(振幅)が大きい事などが明らかになってきた。また刺激のエレメントを輝度変化の刺激よりパターン反転刺激に変えると得られる反応は大きくなった。以上の結果より視野の中心10度以内での情報処理過程と15度より周辺からの情報処理過程になんらかの質的な違いがあるのではないかということが推定された。
|