研究概要 |
加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管膜(48眼)をインドシアニングリーン蛍光眼底造影所見により4型に分類した後、手術により膜を摘出した。摘出した膜は免疫組織科学的手法を用い組織所見を観察し、インドシアニングリーン蛍光眼底造影所見分類と比較検討した。免疫染色はglial fibrillary acidic protein(GFAP)、増殖マーカーであるki-67抗原に対する染色を行い、増殖能について検討した。また、本症の血管新生の過程で重要な役割を果たしているvascular endotherial growth factor(VEGF), basic fibroblast growth factor(b-FGF),transforming growth factor(TGF-β)に注目し、膜内での局在について検討した。結果は脈絡膜新生血管膜のいずれの型も感覚網膜側にGFAPが染色された。これは摘出時に脈絡膜新生血管膜と癒着した感覚網膜の一部がともに摘出されたことを示す。ki-67抗原に対する染色では血管が多いI型、II型に強い染色がみられ、血管が少ないIII型、IV型で染色性が乏しかったことからI型、II型は増殖能が強い膜であることがわかった。さらにII型に比べI型は網膜色素上皮細胞による血管の取り囲みがないため新生血管は活動性が高く、さらに増殖していく可能性が高いため予後は不良であると考えた。VEGF,b-FGF,TGF-βは血管周囲、細胞外基質成分に染色がみられたが、型により染色性に差は認められなかった。今回の検討結果よりI型の脈絡膜新生血管膜は活動性が高く、増殖性が高いことから最も良い手術適応であると考えた。しかし、本症の膜摘出時には網膜色素上皮細胞に加え、感覚網膜も一部ともに除去される可能性のあることが明らかとなり、これは手術療法の限界であると考えた。
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