研究概要 |
本年度は皮質混濁模型を作製するための基礎データとして、皮質白内障患者の混濁局在(瞳孔領内の混濁分布)を調べた。また同対象の自覚症状(見えにくさ)を調査し、混濁局在との関係を検討した。 1. 対象および方法:眼科検診受診者のうち、水晶体皮質混濁のみを認めた368例(平均年齢66.5歳)を対象とし、混濁分布を調べた。白内障以外の所見で視力低下を来しているとおもわれた症例は対象から除外した。混濁分布は徹照像を56分割(放射状に8等分、および同心円状に7分割)し,各領域における混濁の有無を判定した。自覚症状は、金沢医大方式白内障簡易スクリーニングシステム(10項目の問診)で評価した。 2. 結果:「見にくさ」を訴えなかった群(一群)と訴えた群(+群)に分け、混濁分布をみた結果、瞳孔中心2mmφ以内に混濁を有したのは、(-)群:15%、(+)群:25%で+群の方が多かった。また瞳孔領6mm以上の周辺部に混濁が分布していたのは69%(-群)と65%(+群)で差はなかったが、(-)群の混濁は鼻側下方に局在し、(+)群では下方から耳側にまで分布していた。自覚症状のうち、“かすみ″を訴えた症例では,瞳孔中心付近に混濁が局在する率(42%)が高く。夜の運転で支障を訴えた症例では,耳側に混濁が局在していた。瞳孔周辺の混濁も少なからず「見にくさ」に関与することが確認された。 3. 今後の計画:以上より、模型水晶体の混濁形状は円形、輪状、扇型を基本形として、瞳孔中心からの距離を変化させた混濁の作製を試みる。混濁部の材料は未定であるが、水晶体嚢にはソフトコンタクトレンズ、核には紫外線吸収眼内レンズを用いる予定である。網膜像シミュレーションでは、夜の運転時における皮質混濁とグレアーの関係も検討してみたい。また、問診とは別に自覚症状を、コントラスト感度およびグレアー試験から評価も試みたい。
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