研究概要 |
申請者は,・これまでに白内障の病型・程度とそれに対応する見にくさの関係をより具体的にに評価することを目的に、水晶体の後方散乱光(生体下)、分光透過率(摘出水晶体)などを計測し、これを基に混淘模型水晶体による網膜投影像のシミュレーションを試みてきた。既報の模型水晶体の主素材はPMMAで、眼内レンズ型であったが、混濁程度および分布の調整が難しいこと、模型形状が眼内レンズ型であったことなどが問題として残されていた。そこで本年度は、模型の素材に水溶性高分子(増粘剤)を用いて新たな混濁水晶体模型の作成を試みた。 1.方法:アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液に滴下し、約6〜7mm径の球形のアルギン酸カルシウムカプセルを作成し、これを模型の本体とした。両水溶液の濃度(Na-Alg:1〜4%・CaC1_2:1,5,10%)と反応時間(1〜60分)を変え、白濁程度を分光透過率(5mm厚の石英セルを使用)として求め、内部の状態はScheimpflugスリット像から評価した。 2.結果:水溶液濃度と反応時間の増加に伴い、アルギン酸カルシウムカプセルの白濁度も増した。両水溶液とも1%の場合、400nmでの光透過率は反応時間1分から30分で93%から40%に低下しこれ以降はほとんど変わらなかった。透過波長域は約240nm以上であった。また,アルギン酸カルシウムカプセルのコーティングを繰り返し,PMMAレンズにて挟み込むことによって水晶体層構造を認める50歳代の水晶体に近いものが作成できた。 3.結論:本カプセルは水溶液濃度と反応時間により混濁程度を微妙に調整でき、白濁程度を変えた層構造も作成が可能であった。
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