成長期における小腸広範切除術は小腸吸収面積の減少に起因する栄養障害、成長障害を来すため、残存小腸の機能代償を積極的に促す術後療法が望まれる。このような残存小腸の馴化過程に関与するhormonal factorとしては、腸管グルカゴンの主因子であるグリセシチンの効果が期待され、その増殖効果を昨年報告してきた。今回、我々は遺伝子工学的に精製されたヒトグリセシチンを用いて、そのヒト腸管上皮増殖促進効果を種々の条件下でin vitroにその増殖メカニズムを中心に検討した。その結果、1)プレグルカゴンから、プロセッシングを受けグルカゴン、GLP-1、GTP-2は生成される。これら3種のエンテログルカゴンの相乗効果を見ると、グリセシチンとグルカゴン様増殖因子(GLP-2)との細胞増殖相乗効果は認められるが弱いものであり、グリセシチンとGLP-2は異なったレセプタ-を介するが、細胞内で同一の情報系を一部共有し増殖促進効果を示すか、あるいは両者の情報伝達系の活性化がお互いをfeed backして抑制しあう可能性が想定された。2)同様にプレグルカゴンから生成されるグルカゴン様増殖因子(GLP-1)との相乗効果は全く認められず(グルカゴンとGLP-2を加えたものと、これらにさらにGLP-1を加えたものの間にも有意差は認められなかった。)、GTP-1は細胞増殖には関与していないことが想定された。3)増殖因子の差時的な効果からグリセンチンは、competence facorとして本細胞では作用し、G_0からG_1期への移行に関与していることが想定された。 今後、グリセンチンのさらなる細胞内増殖情報伝達メカニズムを明らかにする事により臨床的に有用な投与法を検討していく予定である。
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