(目的)近年、ヒト癌細胞に対する腫瘍特異的キラーT細胞の存在が明らかにされその認識する癌退宿抗原も一部同定され、その癌退宿抗原を用いた腫瘍特異的免疫療法も臨床応用に向け研究されている。しかしながら、小児固形腫瘍における腫瘍特異的キラーT細胞の存在に関する報告はわずかである。今回、小児固形腫瘍よりキラーT細胞の樹立を試み、年少児における抗腫瘍免疫の存在と、腫瘍特異的免疫療法の可能性に関して検討した。 (方法)3生月女児のWilms腫瘍の化学療法前の手術摘出組織を細切し、100U/mlInterleukin-2(IL-2)の存在下で培養した。培養にて得られたIL-2 activated Tリンパ球より、患児のHLAを同定すると同時に、HLA既知各種ヒト癌細胞株に対する細胞障害性を^<51>Cr-releace assey法にて測定し、その細胞障害性のHLA拘束性を検討した。またIL-2 activatedTリンパ球の表面マーカーをFACS canにて解析した。推測された細胞障害性のHLA拘束性を確認するため、ヒト癌細胞株にHLA遺伝子を導入し標的細胞として用い、そのHLA拘束性を確認した。 (結果)得られたIL-2 activated Tリンパ球はHLA-A2402拘束性に細胞障害性を示し、他の癌細胞株及びヒト正常細胞株に対しては細胞障害性は示さなかった。細胞障害性は抗CD3抗原、抗CD8抗原で抑制された。IL-2activatedTリンパ球はHLA-A2402導入ヒト癌細胞株に対して細胞障害性を示し、そのHLA-A2402拘束性が証明された。 (考察)3生月の乳児のWilms腫瘍組織漫潤リンバ球よりHLA-A2402拘束性腫瘍特異的細胞障害性キラーT細胞を誘導した。また、HLA-A2402発現各種ヒト癌細胞株に対しても細胞障害性を示し、このキラーT細胞の認識する癌退宿抗原が、他の癌細胞にも広く発現している事も示唆される。年少児においてもMHC class-Iに拘束した抗腫瘍免疫が存在し、腫瘍特異免疫治療の可能性が考えられる。
|