研究概要 |
先天性眼瞼下垂、眼瞼贅皮により眼瞼の挙上が困難な場合、通常下顎を挙上して視野を得ようとする代償が働く。下顎挙上が幼小児期より存在する場合、顎舌骨筋、頤舌筋、顎二腹筋の張力を高め、下顎の成長にある程度の影響を与えると考えられる。 年齢12才から25才までの40人を対象にセファロ分析を行い、SNB,Go-Ar,Go-Me,midlineの偏位を測定した。また、同時に撮影したスライド写真から、眼瞼形態、頭位を判定し、統計処理を行った。 結果は、眼瞼贅皮を有するグループの方が眼瞼贅皮のないグループよりSNBが小さい傾向が認められたが、有意差は得られなかった。また、Go-Ar,Go-Meにも有意差は認められなかった。しかし、頭位の左右への偏位と、下顎midlineの偏位には相関関係が認められた。つまり、左に傾斜する頭位の場合、下顎は右方に偏位し、頭位が右に傾斜する場合、下顎は左方に偏位する傾向が認められる。 下顎挙上による顎舌骨筋、頤舌筋、顎二腹筋の張力は、体位によっても緩和されうるものであり、実際の下顎への影響はわずかなものと考えられる。 また、優位眼、眼瞼下垂と頭位の関係の調査では、眼瞼下垂に左右差がない場合、優位眼側が挙上される方向に頭位が偏位することが圧倒的に多かった。しかし、眼瞼下垂の程度に左右差がある場合、優位眼に強い眼瞼下垂が生ずると、頭位で優位眼の視野を確保する代償が働く場合と、優位眼が入れ替わってしまい、下垂側の視野を確保する努力がなされない場合があり、頭を傾ける方向には一定の規則が認められなかった。
|