血管内皮細胞(EC)と表皮角化細胞(KC)からなるハイブリッド型人工皮膚の作製法としてFabrication法(組立法)とCoculture法(共培養法)とを検討した。Fabrication法ではKCとECとを別個に培養した後、コラーゲンゲルを添加したコラーゲンテンプレート上にECシートとKCシートを貼付して調整した。しかしFabrication法では堅固な培養皮膚を調整することは難しかった。一方Coculture法では、KCとECとの直接的な共培養は困難であり、真皮線維芽細胞(FB)の介在が必要であることがわかった。すなわち、血管内皮細胞を含有したBell型培養皮膚の構築法が、現時点では有効な方法と考えられた。 次に、血管内皮細胞の同種移植の可能性を検討する目的で、インターフェロン-γ(INF-γ)処理前後におけるヒト血管内皮細胞(hEC)のT細胞活性化因子すなわち主刺激因子MHCクラスII分子や二次刺激因子B7などの発現を検索した。具体的にはチャンバースライド上で培養したECを100U/mlIFN-γで48時間インキュベーション後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、抗HLA-DR抗体や抗B7抗体などを用いた免疫染色よりその発現を調べた。また、細胞接着分子ICAM-1やVCAM-1の発現も検討した。B7分子の表出しない非骨髄由来細胞がMHCクラスII分子を発現している場合、CD4^+T細胞の応答は、活性化ではなく免疫不応答になると言われている。マクロファージなどの骨髄由来細胞では、B7が陽性であるのに対してIFN-γ処理したECではB7は陰性であった。表皮角化細胞(KC)をIFN-γ刺激するとICAM-1やMHCクラスII分子は発現するがB7は陰性であり、ECもKCと同様な傾向を示している。同種EC移植によるCD4^+T細胞の応答は、活性化ではなく麻痺を誘導する可能性が示唆された。MHCクラスI分子の機能は低温処理により低下すると考えられているので、凍結保存したECはKCと同様に同種移植に利用できるものと思われる。
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