本年度において、培養された表皮細胞、線維芽細胞からのPGE2産生に及ぼすサイトカインの影響について検討した。 その結果、IL-1β刺激に於いて線維芽細胞および表皮細胞いずれの場合も、30-60分間程度の刺激ではPGE2産生は生じることはなく、3時間以上の刺激で始めてPGE2産生が亢進した。この事から、サイトカイン刺激に由来するエイコサノイド産生には誘導期間を必要とすることが確認された。そこでこの誘導期間が、エイコサノイド産生に関わる各種合成酵素(特にホスホリパーゼA2[PLA2]、シクロキシゲナーゼ[COX])のいずれかを確認するため、アラキドン酸切り出し物質であるブラジキニンを培養培地中に添加し、PGE2誘導実験を行なった。その結果、ブラジキニン添加のみでは、PGE2産生量はわずかに増加しただけであったが、サイトカイン刺激に由来するPGE2産生亢進反応は、ブラジキニンの添加で著明に増加した。以上の事から、サイトカイン由来のPGE2産生には誘導されたCOXすなわち誘導型COX(COX2)が関与していることが推定された。 次に本実験法を用いて、各培養細胞のCOX2誘導について免疫組織化学的に検討を加えた。その結果、サイトカイン刺激に由来するCOX2抗体反応性物質の陽性像が確認され、サイトカインで誘導されるPGE2は、COX2由来であることが証明された(投稿中)。 次年度以降、本実験系によりCOX2の遺伝子レベルでの発現をRT-PCR法を用いて検討した上で、COX2媒介性PGE2の結合組織代謝に及ぼす影響を検討する。
|