抗痙攣剤であるフェニトイン、カルシウム拮抗剤であるニフェジビンあるいは免疫抑制剤であるシクロスポリンの服用により、しばしば歯肉増殖が起こることが知られている。薬剤性の歯肉増殖病変は、薬剤服用者の年齢や薬剤服用期間によって歯肉増殖に差異が現れること、プラークコントロールによる歯肉炎症の軽減により歯肉増殖の抑制が起こることが報告されているが、これらの差異がいかにして起こるかについては、未だ不明な点が多い。研究代表者は、フェニトインの長期服用により、歯肉増殖を示した患者の切除歯肉を用い、歯肉線維芽細胞における細胞動態を解明することを目的とした。 【材料及び方法】 フェニトイン服用患者からの切除歯肉を半割して、一方をホルマリン固定・パラフィン包埋し、連続切片を作製し、他方を培養用とした。対照群としてフェニトインを服用していないエプーリス患者由来の切除歯肉を用いた。パラフィン包埋した連続切片において、HE染色及び細胞増殖能の指標としてAgNOR染色を施し、線維芽細胞の細胞活性能を検索した。 【結果】 HE染色では線維芽細胞に富んだ密な線維性結合組織の増生がみられ、ポケット上皮側の血管周囲性に軽度から中等度の慢性炎症性細胞浸潤を伴っていた。AgNORs染色では、フェニトイン服用群においてポケット上皮側の線維芽細胞の平均AgNORs数は、歯肉上皮側の平均AgNORs数より高値を示した。また、フェニトイン服用群の歯肉上皮側の線維芽細胞と対照群とでは、やや服用群で高値を示した。 【展望】 さらに、TGF-β(transforming growth factorβ)、ALP(alkaline phosphatase)の発現について検索し、細胞活性能との関連性について検索する。
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